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「山の霊異記 黒い遭難碑」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 今や"山の怪談"の第一人者?になった著者による、怪談実話短編集第2弾。

「山の霊異記 黒い遭難碑」安曇潤平著(MF文庫ダ・ヴィンチ刊)

◆内容紹介(裏表紙他から)
背筋が凍る山の怪異譚の数々

山岳怪談実話の名手が放つ、著者自ら訊き集めた極上の山の怪異譚。自分が体験した話、山仲間から聞いた話、山麓の呑み屋で仕入れた話……。渓流釣りや山菜狩り、キノコ狩りなど、登山以外の山の達人から聞き集めた怪談も。山を愛する著者ならではの山岳描写豊かな全21編。文庫化にあたり書き下ろし「ポニーテールの女」を収録。 解説・中野純。巻末エッセイ・恒川光太郎、小島水青。

 前作「山の霊異記 赤いヤッケの男」の文庫版を読了した際、第2弾が単行本で既に刊行されていたので、その文庫化を心待ちにして約1年。4月にこちらが出たのを書店で見つけ、即購入。
 今回も第1弾と同様、自らの体験談に山仲間やその他の知人から聞き集めた怪談(という体裁)21編が収録されている。文庫化にあたって書き下ろし1編を追加したのも前作と同じ。

 巻頭を飾り、かつ今回の話では恐怖度で1、2番の『顔なし地蔵』をはじめ、「怪談実話系」シリーズで既読のものもいくつか含まれている(『霧幻魍魎』『青い空の記憶』)。
 全体的には1編あたりの長さがやや増している印象有り(見開き2頁で終わる掌編もあるが)。その増えた分はほとんどが山岳地帯や周囲の自然描写に費やされているが、それでもやはり……前作同様、山登りなど全く無縁の自分には"尾根"や"稜線"といった地形を表わす言葉で具体的な情景がイメージしきれないままだった。この辺りは仕方ないところなのかもしれないが。

 ストレートな怪談実話としての怖さという点では、第1弾よりもややパワーダウンした感も無きにしも非ず。成仏できない遭難者の幽霊が―それも無惨な姿で―現れて、ビジュアル的にとにかく怖いという話はあまりなく、同じく山を愛する者として、不幸にも山で命を落とした先達や仲間への追悼の意、そして何よりも大自然への畏怖や敬意が感じられるような話が増えている。もし自分が体験したとしたら本当に恐ろしいであろう『三途のトロ』『大張峠』などはそのような読後感だった。
 また、正体が人間とも幽霊とも何とも想像のつかない、得体の知れない存在による怪異譚もいくつか。『はないちもんめ』や書き下ろしの『ポニーテールの女』、そして和風ダーク・ファンタジーといった趣の『鹿神旅館』などはその系統だろう。
「怪談実話系/魔」収録の近作を読むと、最近はこの著者の書く話もそういう方向に寄って行っているような。それはそれで悪くはないのだが、前作収録の『アタックザック』『鏡』『J岳駐車場』のような直球の恐怖譚も読みたくなる。

 この著者が描く存在(幽霊とは言わずにおく)がやけに生々しいというか、実体感を持っているのもおなじみのところ。そこまでいくとまんまフィクションだろうに、と思わずにいられないが、これはあくまでも実話"系"怪談なのだからそれでいいのだろう。背負って山小屋まで連れて帰ってくれたお礼に、先にビールを注文しておく(しかも代金は相手の財布から抜いているという!)幽霊って、ねぇw  

 中盤に収録の『裏山』だけはさっぱり意味が分からない。話の意味もだが、全編中これだけが雰囲気も文体も全く異なっており、これを執筆し、またこの短編集に入れた意図も、何とも解せない。
 もしかすると、この本で最も怖いのはこの点なのかも?

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