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「怪談実話FKB 怪談五色2 忌式」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 実話怪談の手練れ5人による怪談集「FKB 怪談五色」の第2弾。

「怪談実話FKB 怪談五色2 忌式」黒木あるじ他著(角川ホラー文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙より)
五人の書き手が紡ぎだす、この上なく贅沢な恐怖に彩られる『怪談五色』第二弾!黒史郎は、「大きな包丁を持って山羊を殺す夢」を見た老女がもたらす現実とシンクロ「解体予知夢」、夢だと片付けられない忌まわしい話の数々を披露。黒木あるじは、「一日店長顛末記」にて、黒木の元に訪れた「怪異を体験した人々」の話を淡々と記す。伊計翼は、その独特の語り口「恐ろしきも愛しきやし、怪談の国」で読者を怪異に巻き込んでゆく。朱雀門出は、耳垢とりが異常なほど好きだった彼の耳に潜んだ怪「りょうあしカタアシ」他、読み進めるうちにリンクし合う怪異が読者の不安感を煽る。つくね乱蔵は、妊娠した胎内の子に、幼い娘が嫌悪をするのは何故?「暗く温かい海」他、日常の中でふと陥る怪異の隙間を書ききる。怒濤の実力派たちによる五芒星の真ん中で、存分に怪異を全身に刻み付けろ!

 何とかの暇なしというヤツで、この1年半ほど趣味方面の読書ペースもガタリと落ちてしまった。出張などである程度の長い時間鉄道に乗ることでもないと、積読になっている長編にもどうも手が伸びず、ちょっとした時間に2、3篇を細切れ読み?できる、こういった実話怪談本みたいなものに自然と手が伸びてしまう。
 実話怪談本の出版ペースの勢いは相変わらずのようで、よくもまぁこれだけの様々な書き手が、ネタ切れもせずに出せるものだと思う(実際どれほど売れているのか定かではないし、ネタの使い回しや再利用なんてのは当然あるのだろうけれど)。
 今回は、昨年1月に読了した「FKB 怪談五色」の第2弾。執筆陣やコンセプトは全く同じで、作家それぞれが複数篇を書くという枠組みも含めて、以前から読んでいる『饗宴』シリーズとそう変わらないとも思えるのだが。 

 全29編。

  • 黒史郎
    解体予知夢/オミヤマモリ/嘆く天井/行灯逝け/ハッシシ/時間が飛ぶ
  • 黒木あるじ
    一日店長顛末記(火の玉/臆病者と求道者/ババぬき/おわかれのうた/くるま/海亀の家)
  • 伊計翼
    恐ろしくも愛しきやし、怪談の国
  • 朱雀門出
    りょうあしカタアシ/小人のいる店/震える三人/つまみぐい/めし/誤作動/金曜日の出来事/gさんと人形
  • つくね乱蔵
    暗く温かい海/家族の風景/早朝の客/独り暮らし/返品お断り/戻れない/揺れ手首/瞼の母

 黒史郎は「解体予知夢」が、冒頭から何とも厭な後味。祖母がなんでそんな夢を見るのか、親戚中になぜ不幸が次々起こり、それが祖母の夢とリンクしているのか。次の「オミヤマモリ」も、タイトルの”言葉”に秘められた怖さが最後の1行に表れているような。
 黒木あるじ「一日店長顛末記」は、書店で一日店長を務めながら、実際には怪談や不思議な体験談を持つ来客に語ってもらい、それを聞き書きでまとめたもの。これは第1弾の「怪談売買録」と同じ体裁だが、それほどまでこういった―怪談本に載せられるような体験をしている人がいるということか(素人語りの話を作品にするのは、ひとえに書き手の腕次第ではあろうが)。
 伊計翼も、前回と同じくエッセー風の語り口調の中から怪談を語っていくというもの。”怪談社”なる団体で怪談会のライブなどで活動してきたからか、この文体は好き嫌いがわかれるのかも。自分は今一つ……だが、イベントで語りとして聞いたら印象は違うのかもしれないが。
 朱雀門出もやや語り口調だが、この作品集をはじめ、何気ない会話や口調が次第に怪異に満ちたものとなるのがこの作家の特色でもある。前の話のキーワードを拾って次の話が始まる辺りも雰囲気が出ている。グルメサイトで見つけたとある親子丼の店に向かった体験者が、件の店が入っている雑居ビルの前で見たものとは……何とも奇妙な一篇「めし」と、同じく何とも不可解だが、ラスト1行でぞくりとさせられる「誤作動」が印象に残る。

 そして、掉尾を飾るのがつくね乱蔵
 第1弾でも最後に9篇を載せていたが、物悲しくも微笑ましい1篇を除けば、どれも単に怖いというよりは怖くて厭過ぎる話ばかりだった。その印象から第2弾も購読してみたということで。今回の8篇もメインの怪異そのものより、それに伴って晒される、怪異に関わった人間の暗部がとにかく厭な余韻を残す。4歳の少女が母の胎内にいる赤子を嫌い恐れる理由「暗く温かい海」、学生時代の友人にまとわりついていた幼い少女の影。その望みはなんだったのか「家族の風景」、ある瑕疵物件について、担当した不動産会社や業者の人間に続く不幸の連鎖「独り暮らし」など、どれも語られる怖さの意味するものが終わっていないことが、怖い。ラストの「瞼の母」などは、怪異そのものよりも、それを語った当人の方がよほど恐ろしい。

 第1弾の「怪談実話FKB 怪談五色」はこちら。

 この手の実話怪談系、自分が作家買いするのは平山夢明、福澤徹三、それに山岳怪談の安曇潤平なのだが、つくね乱蔵の作品集も読んでみたくなった……が、狂気や恐怖が笑いと紙一重にあるようなドライ系の平山怪談とも、陰鬱で内に籠るような湿り気がありながら、どこかで人間の悲哀と逞しさも感じさせる、ウェット系な福澤怪談とも異なる、誰もが内に秘めた嫉妬や憎悪、卑劣さ、矮小さ、弱さ―そういった人間のドス黒さを怪異と共に突き付けてくる”つくね怪談”は……まとめて読むのは少々危険かもしれない。

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