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「鬼談百景」 [Book - Horror/SF/Mystery]

「十二国記」「東亰異聞」、また映画化された「残穢」が現在公開中の作家、小野不由実の実話怪談集。

「鬼談百景」 小野不由実著(角川文庫刊)

◆内容紹介(裏表紙から)
学校に建つ男女の生徒を象った銅像。その切り落とされた指先が指し示す先は……(「未来へ」)。真夜中の旧校舎の階段は“増える”。子どもたちはそれを確かめるために集合し……(「増える階段」)。まだあどけない娘は時折食い入るように、何もない宙を見つめ、にっこり笑って「ぶらんこ」と指差す(「お気に入り」)。読むほどに恐怖がいや増す―虚実相なかばする怪談文芸の頂点を極めた傑作! 初めての百物語怪談本。解説・稲川淳二 

 先日記事をUpした「ナイトランド・クォータリー Vol.3」の、映画「残穢―住んではいけない部屋」の紹介記事で言及されていた同書。「残穢」は文庫で購入していたが、こちらは以前から店頭で見かけていたものの、実話怪談本が大小の出版社から乱発気味に刊行されている昨今の状態から「また似たような本なんだろう」と手が伸びずにいた。が、「ナイトランド―」の記事によれば、本書に収録されている話と「残穢」の内容がリンクしており、2冊で一つの百物語になる……みたいな記述も。ならばあちらを読む前にこっちを読んでおかねば、と出先の書店で購入、帰路の電車内で半分方読んでしまった。

 収録されている怪談はどれも短く、ほとんどが2~3ページ、短いものだと数行程度のものも。全て雑誌掲載時に読者から寄せられた体験談を元に再構成したものだとのこと。偶然なのか読者層がそうだったのか、いわゆる”学校の怪談”……学校が舞台となった話が多い。またストーリーというよりは、事象だけを切り取ってぽん、と提示し、それにまつわる因果や原因などは語られぬまま終わるというものが殆ど。ま、それらを一々付けていたら興醒めしてしまうかもしれないが。

 住宅街の街灯の下、深夜に佇む家族らしい数人の人影(「街灯」)、美術教師が遺した、白で塗り潰したキャンバス(「白い画布」)、離婚の理由は、夫の実家で墓参を勧められたことだった(「さずかりもの」)、肝試しの中途、山寺の入口にある電話ボックスを利用したところ(「電話ボックス」) 、高速道のトンネルで起こした事故、通りがかったタクシーの運転手が語ったことは(「トンネル」)、夏の終りの海辺、砂浜のベンチで横に腰かけた少女は全身ずぶ濡れ、しかも……(「海へ還る」)、墓場で始めた鬼ごっこ。そこから抜け出す条件は……(「続きをしよう」)、父親がその踏切を絶対に通らない理由(「踏切地蔵」)、閉めたはずの自室のクローゼットの扉が、いつもわずかに開いている(「密閉」)、ラジオのチューニング中に聞こえてきた女性の体験談。それに聞き入った友人は……(「空きチャンネル」)、川を下る流し雛を見ていた山伏が、子供たちに告げた一言(「満ちる」)……等々が印象に残った。

 中でも特に怖い、あるいは印象的なのが次の三話。
 内容紹介でも触れられている「お気に入り」は、言葉を覚えてばかりの娘がお気に入りなのは”ぶらんこ”遊びなのだが、それは公園のブランコとは異なるようで……。「残穢」にも登場するという、ラストで一瞬肌が粟立つような一篇。
 細かい雨の降る下校の途中、黄色いレインコートの小さな少女とぶつかりそうになった語り手。その後、振り返るたびに黄色いレインコートが遠い角口に立ち止まっているのが見える……「レインコート」は、怪異とその原因(らしきもの)にも触れられてはいるが、何よりも灰色の情景の中、ぽつんと浮かぶレインコートの黄色が鮮やかで、怖い。
 桜が満開の季節、神社の参道脇の大きな枝垂れ桜はあたかも白い滝のような見事さだった。深夜、花簾の中に見えたのは、薄紅色の振袖姿……「花簾」はラストに収録されており、他とは雰囲気を異にする美しく幻想的な掌編。桜にまつわる怪談や幻想譚は少なくないが、この一篇も夜桜を見るたびにふと思い出して、枝垂れ桜の奥に振袖姿を探してしまうかもしれない。

 

 さて、「残穢」はいつから読もうかな、と。
 本書の印象が消えないうちに……かな。 

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ぼんぼちぼちぼち

怖そうでやすね~
解説が稲川淳二というとこも説得力ありやすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2016-02-11 12:55) 

るね

>ぼんぼちさん
全般を通して怖い、というより、何とも説明がつかないが不可思議な、奇妙な話といった印象でしょうか。だからこその”鬼談”なのかもしれませんが。
ここでは触れませんでしたが、稲川淳二氏の解説もなかなか味わいがありました。
by るね (2016-02-12 02:08) 

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