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「大江戸怪談 どたんばたん《土壇場譚》」 [Book - Horror/SF/Mystery]

 怪談、ホラー界の鬼才、平山夢明による時代怪談・恐怖譚集。 

「大江戸怪談 どたんばたん(土壇場譚)」平山夢明著(講談社文庫刊) 

◆内容紹介(帯書き+裏表紙から)
死屍累々、江戸最凶の恐怖譚
もうそこは死の崖っぷち。民よ、戦慄け、壊れろ。
”恐怖の申し子”の面目躍如!江戸最凶の怖気と狂気の33連弾。

饅頭のようにブヨブヨと弛んだ肉で土の中から嗤う裸の巨女、味覚を失い踵の胼胖(たこ)から己が摩羅(まら)まで自らを喰い尽くす男、按摩が畳の隙間に隠した盗銭がもたらす阿鼻叫喚―幾百の実話快談を記したホラー界随一の奇才が、死の淵を覗いた江戸時代の人間の哀れと可笑しみを、生き証人かの如く書き表す異形奇譚集。

 平山氏の時代物恐怖譚ということで、10年前に読んだ「大江戸怪談草紙 井戸端婢子」(竹書房文庫)と内容がダブってるんじゃ……と思ったら、書き下ろしに講談社文庫のPR誌『IN☆POCKET』に連載されたものと、「井戸端~」収録作品の一部を加えたものとのこと。前口上で著者が断っていたが、どうやら竹書房文庫でシリーズ化を目論んでいたものの頓挫したらしい。待ってたけれど続刊が出なかったのはそういうことか……。

 平山氏の本を読むのは久しぶりだが(最近は実話怪談もあまり書かなくなっているようだし、この人の小説にはなぜか元々、今一つ食指が動かない)、時代物ではあろうともやはりこの人の書いたものだな、という感じ。
 時代物を書き始めたきっかけが、故杉浦日向子女史の傑作「百物語」(新潮文庫)に触発されてということだけあって、それに載っていたような―理由も説明もない何とも不可思議な―奇譚(「右」「誘い火」「盥猫」「教え箱」「神通面」など)や妖怪話(「耳閻魔」「転び童」「六斎の間」、そして表紙にもなっている「饅頭女」!)、市井でつましく暮らす人々の優しさや親子の情愛が描かれるやさしい話(「こづかい楠」「汁粉」「妖物二題」「卵居士」他)、そしてこの著者の本領が発揮されたような酸鼻極まる因果応報話、復讐譚(「地獄畳」「魂呼びの井戸」「人独楽」「萎えずの客」「約定」など)のおおよそ三種に分けられるのは「井戸端婢子」とほぼ同じ(33編中13編が再録なのだからそうなるか)。

 印象に残ったのは― 

  • さる大名屋敷の働き者の腰元が、ある時から己だけに聞こえる陰口に悩まされるようになる。自分は気が触れたのだと悲嘆した彼女は暇乞いを申し出、自死を選ぼうとする。(「耳閻魔」
  • 神田の長屋にある井戸が、死に瀕した者の名を呼びかけると助かると評判になる。ある秋の夜更け、ひどく汚れた身なりの女が、瀕死の娘の名を呼んで欲しいと長屋を訪ねてくる。(「魂呼びの井戸」
  • 吝嗇家の医者の屋敷で奉公するお絹は空腹で眠れぬある夜、庭の楠の幹に小さな顔を見つける。呑気な表情を浮かべるその顔が腹立たしくなったお絹は、やにわにその顔をつねり上げ……。(「木の顔」
  • 医者修業で諸国を巡っていた若者が、陸奥のひなびた漁村で一夜の宿を乞う。温かく迎えられたが、村人たちの顔大人も子供も一様に生白い。脈を取ると≪死脈≫、つまり臨終の者の脈を示していた。(「死脈」
  • 性根の曲がった両替屋六兵衛は、新しく出来た軍鶏鍋屋で待たされたことに臍を曲げ、とても旨い鍋の味に嘘の難癖をつけ始める。進退窮まった軍鶏鍋屋の亭主は……。惨憺かつ悪趣味な結末がいかにも平山節な「人独楽」
  • 反物屋に伝わる古い木箱は、紙で封がしてあり、失せ物を尋ねると教えてくれると伝わっていた。新しく嫁入りした娘は中を見てみたいと思い始め……。予想とは異なるオチが何とも可笑しい「教え箱」
  • 薬種問屋の倉掃除で出てきた古い木箱には『不解封之事』の書き付けが。主人が箱を開けると、入っていたのは精緻かつ薄気味悪い《痩男》の能面だった。主人はそれを帳場の鴨居に飾るが……。(「神通面」) など。  

 今回は新録の「しゃぼん」「死脈」が、人の世の悲しさ、虚しさを感じさせて印象深い。特に「死脈」は、冒頭で提示される場所からして、間もなく6年を迎えるあの大災害が執筆のきっかけになっていると思しい。 

 著者の実話怪談が好きな人、杉浦女史の「百物語」を愉しめた人にはいいだろうが、通常の時代小説好きにはまずウケが良くないだろうな、と。
 個人的にはこの系統は嫌いじゃないんで、今度こそ続刊を……(^^;) 

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コメント 2

green_blue_sky

怖いものは苦手なので読めない(^_^;)
百物語は読んでみたいです・・・
by green_blue_sky (2017-02-17 23:52) 

るね

>green_blue_skyさん
杉浦日向子さんの「百物語」は漫画ですので(絵柄もキレイ)読みやすく愉しめると思います。怖い話も無論ありますが(^^;)
by るね (2017-02-21 00:32) 

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